束縛と自由で5のお題 3)重い体躯
お題配布元:Nameless様 http://blaze.ifdef.jp/
祭りが、あるのだそうだ。
城からすこし歩いた先にある、大きな広場で。 領民たちが祭祀を行い、楽を奏でて歌い踊るのだそうだ。
歌うたいや舞をするもの、雑技などの芸人もたくさん集まって、それは賑やかに騒ぐのだという。
食べものの屋台が立ち並び、この時しか食べられない郷土料理や菓子を売るのだと。祭りの賑わい目当ての商隊も立ち寄るから彼らの露店も大賑わいで、普段は買えない珍しく貴重な物品も、並ぶのだという。
うっすらと目を開けた諸葛亮は天井を見上げた。
素朴な格子模様は、あまり見慣れたものではない。毎日、多くの時間をここで過ごすにも関わらず。
だって、そうであろう。
執務室の天井を見上げることなんて、普段は無いことだ・・・
執務室の奥には、大きな机がある。
その机の上の諸葛亮は横たわっていた。両手は頭上でひとつに縛られており。口には猿轡を噛まされていた。
上半身の衣は乱れておらず、下半身は、重々しい文官衣の長い裾を割られ、膝裏に当てられた手で両足を開かされて。
下肢には男のものを深深と根元まで、受け入れさせられていた。
男が腰を動かすたびに、諸葛亮の肢体も揺れていた。
男の律動に合わせて、乱れた衣の合い間から覗く腿が、ひくひくと痙攣する。
轡をされている口が苦しい。悲鳴すら上げられないのが辛い。
そして何より、下肢からもたらされる猛毒のような悦楽がおそろしかった。
立ったまま諸葛亮を犯している男が、ひそやかに笑った。
「…感じて、おられますね」
男らしい低音で、優しくすらある声音だった。男はすこしのあいだ動きを止め、諸葛亮の前に手を伸ばし、先端からこぼれる蜜をすくい、それを塗りつけるように花芯をなぐさんだ。
「ほら、勃ち上がって……濡れておられます。気持ちがいいですか」
諸葛亮は開いていた目を閉じた。
気持ちは、悪かった。
そこを刺激されたことにより、身体の奥の性欲という獣が歓喜していることが。
性器は反応しているようだった。諸葛亮は自分の身体がどうなっているのか興味はなかったが、毒のような快楽が下肢から這いあがってくるのでそうなのだろう。
また男が動き出した。ぐちゃぐちゃという粘性の音が響き出し、脳裏までもがぐちゃぐちゃと掻きまわされ白く染まっていく。
目を閉じていると余計に身体の衝動を感じ入ってしまい、諸葛亮は目を開けた。天井がぼやけて揺れている。
「ふぐ、うぅ・・・・うっ・・・」
遠くで聞こえるのは、自分の呻きなのだろうか。
出せない声の分だけ嫌悪と毒のような快楽が身の内に降り積もる。
「・・・気持ち良い、でしょう?諸葛亮殿・・・あなたの好い所を教えて差し上げましょうか?」
「ん、ぐ・・・、っ」
諸葛亮はびくびくと引き攣った。ひどく敏感な快楽の塊のような箇所があって、そこを擦られると勝手に身体が跳ね、異常なほどの熱が篭る。
「ん・・ん、ふぅ・・・ッ」
いやだと首を振るも刺激を遮断することは出来ず、快楽がこみ上げる。
こわい
諸葛亮は、弱音のようなものを感じた。一度おびえを感じるともう駄目だった。抵抗しようとしていた自我が急速に薄れ、身体が弛緩してゆく。ひく、と喉が震え、目に涙が浮かんだ。
「・・・そのように、お泣きにならないで下さい」
困ったように言って男は、形の良い指を伸ばして流れ出た涙をぬぐった。
この男は、諸葛亮に焦がれている、のだそうだ。
あなたに抵抗されると、心が痛むのです。
あなたに嫌だと言われると、酷いことをしてしまいそうなので。
そう言って、両手を縛め、口を塞いだ。
大きな手で腰を固定されて、弱い其処ばかりを突き上げられて、諸葛亮は背をのけぞらせた。ひときわ大きなうめきがあがったが、布に吸い取られて外には漏れなかった。
視界が白くなってくる。震えが止まらない。 達したくない。
だが視界はますます白くかすんで身体が跳ねた。
喉の奥から悲鳴がほとばしって、脳裏までも真っ白になった。
昇り詰めて締め付けるその誘いのままに、さらに脚を開かされて、滾ったものが無遠慮に奥まではいりこんでくる。
かすれた声で何事かをつぶやいた男が、諸葛亮の身体を自分勝手に揺さぶりむさぼって、精液を吐き出した。
終わったあとの男は、やさしい。
手首と口を縛めていた布をとられ、丁寧に助け起こされた諸葛亮は、あられもなく乱された衣を直す気力もなく、ふらりと座り込んだ。どこにも力が入らない。
なにか、大事な用があった気がする。
扉を叩く音が聞こえた。
諸葛亮、・・・諸葛亮、――おらぬのか・・・?
『祭りが、あるのだそうだ』
『一番大きな広場で。領民たちが祭祀を行い、楽を奏でて歌い踊るというのだ』
『歌うたいや舞をするもの、雑技などの芸人もたくさん集まって、それは賑やかに騒ぐのだというぞ』
『食べものの屋台が立ち並び、この時しか食べられない郷土料理や菓子を売って―――』
『一緒に、行くか?諸葛亮』
『主君と軍師がいっしょに抜け出すというのですか』
『たまには、いいだろう?』
『そうですねえ・・・』
「返事を、なさらないのですか」
「・・・・・・・」
確かな約束をしたわけではなかった。
執務室の鍵はおりている。
このまま、うずくまって声を立てなければ、誰もいないものと思って、あきらめて行ってしまうだろう。
「殿と、軍師殿が、祭りにいかれるというなら、私は伴に付こうと、思っておりましたものを」
・・・・・祭りに?いっしょに?領民の踊りや芸人の舞を見て・・屋台で名物を買って食べ歩いて・・・?
・・・・・他の男の精液を、体に入れたままで―――・・・?
諸葛亮――、いないのか・・・?
劉備の声が、足音が、近づき、立ち止まり、――しばらくして、遠ざかっていった。
重い身体は、指一本さえも動かせなかった。
(2019/10/5)
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