とける  趙孔(私設)


*できている趙孔、事後の後始末からの





薄暗がりに汗に濡れた男の体躯の輪郭がうっすらと浮かび上がっている。その下で細い声が響いていた。
途切れ途切れに上がる喘声は時に悲鳴のように高くなり、咽び泣きのように低くもなり、かすれた懇願にもなった。
「や、あぁ…‥あっんぁ、…あ、あ」
糸のように細く紡がれる声は、牀台のきしみと重なるように夜を震わせる。
ときに声が途切れるのは口を塞がれたから。そうされたあとは一段とあえぎが多なって、牀のきしみも激しくなる。
肌がぶつかり合う音が高くなり、結合部から生まれる淫らな水音と交わり合うなかで、ひときわ高い嬌声が上がり。
やがて静かになった。






「……子龍、どの…?」
「軍師は眠っておられよ。あとは某がいたします」
「うん…」
額のあたりに何か触れる感触があり目を開けかけた孔明は、赤子をあやすように髪をまさぐられ耳朶に甘いささやきを落とされて、再び目を閉じた。

閉じたまぶたの裏がほんのりと明るくなったのは、明かり皿に火を灯したからだろうか。
どうして。あとは寝てしまうだけなのに。

どくどくとはげしく脈打っていた鼓動はようやくおさまり、敷布に投げ出した足は気だるいばかりで動く気力はまるでない。
うとうととまどろんでいると、心地良い冷たさの濡れた布が、額を、頬を、ぬぐっていく。ことさら丁寧に顔を拭かれたあとは、熾火のように熱がくすぶる肌の表面に湿った感触が当てられて、ようやく気付いた。
身を清めてくれているのだ。
いつも情事のあとの汗も体液も、朝になって目覚めるときには消え去っている。
誰がやっているのかなんて問うまでもない。あたりまえの事実に今更ながら気付いた。

時折静かな水音がするのは、水桶に布を入れてゆすいでいるのだろう。その音がしたあとの布は冷たくて気持ち良かった。

手足をゆっくりと拭われた後は、胸部から腹へと布がすべった。
腹部と下肢が繰り返しぬぐわれているのは、自身が放ったものでねっとりと濡れているせいだ。
たいそうきまりが悪いが、指一本すら動かすのが億劫な孔明はなされるままになっていた。

肌のあちこちにうずくような感触があるのは、至るところに散らされた吸い痕が熱を持っているからだろうか。
ふと、まぶたの裏が翳って、ひどくうずく箇所のひとつである胸の朱粒に刺激があった。
え、……
身をかがめた彼が、そこを口に含んでいる…
ほんのわずかな刺激なのに身体が敏感に反応してしまい、投げ出した手がびくりと震えた。
「ん……」
快を煽るではない繊細な動きなのに、思わず声が漏れてしまった。
「軍師、…孔明どの」
つぶやきとともに、唇は首筋に移動してそこをたどった。ごく軽く歯を立てられて、息を呑む。耳のうしろに口唇が押し当てられ、耳朶を甘く噛まれて、こらえきれず息がもれる。
あ…
避けようと身をよじりたいのに、全身の力が抜けていて身をすくめることさえ出来ないでいると、乱れた髪をやわらかく撫でられて、口唇同士が重なった。
触れ合わせるだけの口づけにぼぅっとしていると、両脚を割り開かれ片足を持ち上げられて、後孔に指が触れる。

体勢のゆえに口を開いた穴からとろりともれる感覚があって、背筋が震えた。あふれ出たもののぬめりを借りるようにして、指がぬるりと押し入ってくる。
ひ、っ
夢うつつの微睡みが一気に覚めるような心地だった。
入れないと掻き出せないのだということすら考えた事がなかった。
いつもこんなことを、されていたのか
濡れている内壁に指が這い、中にわだかまるとろみを繊細な動きで絡めとり、ゆっくりと掻き出してゆく。
一本が根元まで、そしてさらに隘路を割り開くようにもう一本も潜り込んでくる。けしていじめるような動きではないのに、過敏になっている其処は過剰に反応し、中がひくひくと痙攣した。
「ふっ、ぅ、…ぅ、ん、」
「……軍師…?起きてしまわれたか」
「あ、」
身じろいだ拍子に良いところに当たってしまい、涙目になった。
起きてしまったからと遠慮が無くなったのか、たくましい腕に抱き寄せられて抱き起こされる。
後ろに指を挿入しやすい体勢にしただけなのだろうが。白濁を掻き出されるという行為に羞恥と居たたまれなさを感じた孔明は頭を振った。



「や、いや……」
どこか夢と現実があいまいなふうに、幼子がむずかるように首を振る孔明に、趙雲は甘い微苦笑をもらす。

嵐のような熱情を共にしたあとの軍師はいつも、ぐったりとしてせわしない息を継ぎつつ目を閉じて寝台に身を沈め、呼吸が整ってくるころにはすでに眠りに落ちている。
趙雲が彼の身を清めている合間はすこし反応があるが、始末が終わりに差し掛かる頃には深い眠りにとらわれているのが常であって。目を覚ましてしまうことはなかった。


今宵も、夢うつつにまどろみ、趙雲のなすがままに身を任せるさまが無防備で、幼いような可愛らしさもあり、なまめかしくもあり。
身を清めるだけの筈が、つい身体をまさぐってしまった。
目覚めさせてしまったのは申し訳なくも思うが。
それでいて喜びもある。
趙雲の身体はいまだ濃厚な熱を帯び、腰あたりは重苦しい。
どうしたものか、と甘い悩みを感じながら、腕に抱いた身体を引き寄せてゆっくりと唇を塞いだ。驚いたように孔明が目をみはる。
「ん、――ぅ」
口づけは深まり、舌をもぐりこませると熱い口内に包まれた。
舌先を探りあてて吸い上げる。
「ぁ、……子龍殿」
こぼれる甘い吐息とともに呼ばれて、潤んだ瞳で見上げられ、情が煽られた趙雲は、孔明の後ろに入れたままであった指を中でゆるやかに滑らせた。
熱い隘路をゆっくりと穿って行き来させ、とろりとしたぬかるみを掻き出すために、ひそやかに指を折り曲げる。
「…ああ、子龍、だめ──、やっ……ああ…ん」
「そのように締め付けては、軍師。掻き出せぬのですが」
力を抜いて、と耳元でささやかれ、孔明の背はびくりとひきつる。足先が震えて敷布を搔いた。
「やめ、」
「もう少しですから」
といいつつも、後孔に入れた二本の指はそのままに、片方の手指は胸へと移り、朱粒へと絡ませる。情交の愛撫によって愛らしく腫れたそこを繊細に弄ると、趙雲の胸にもたれかかっている身体がこまかく震えた。

背を趙雲の胸にあずけ、開いた両脚のはざまにある奥処は、趙雲の指をきつく食んでいる。
胸をいじりながら、指を動かした。
ふくりとふくらんだしこりをかすめると悲鳴が上がる。
「…止め、…お願…い…、ああ──」
「しかし、出さねば…軍師の身に障りが」
さらに奥へと侵入させると、軍師の伏せられた睫毛が震えるのが見えた。
身を震わせるのにあわせて締め付けてくる隘路に趙雲も息を熱くし、奥へとゆっくりと埋めていく。
内部を満たす濃密なとろみはおのれが放ったものだ。
ああ、もう一度貫いて蜜のようにとろける中に包まれたい。奥を突いてなかをかきまわして――…
「や……いや、…ぁ」
孔明は頭部を振って抗うも、秘奥のなかでじっくりとしこりを押しつぶすようにされると背が反った。
「やめ、……んっ、ああ…――」
こらえようとしてできず、甘い声をもらして身をよじらせて孔明は達した。薄い精液がこぼれだす。



「やめてと云いましたのに」
「は……」
うらみごとに趙雲は笑みを含んだ息を喉奥から吐き出した。
「あなたがあまりに無防備で、…愛らしくあられて、つい」
「……私のどこが愛らしいのか」
確かに軍師の整った白面は彫像のような冷たさがあり、黙っていると近寄りがたいほど威厳がある―――のだが、閨での彼は理知が色に呑まれるさまがあやうく艶美であり、かといって幼子のように愛らしく趙雲に甘えもする。
「軍師の幼きのころはさぞかし美しく可愛らしい子どもであったのでは」
「…それは。否定しません。……私とそっくりだと人がいう妹は、まさしく美しく愛らしい幼子でした」
「なるほど」
「趙将軍こそ、凛々しく愛らしい子どもだったのでしょう」
「傷の絶えない子どもでしたよ。いくさ遊びが好きで、木剣を振り回して、――気の荒い馬を乗りこなしたいと躍起になって、幾度振り落とされたことか」
「ふふ……それが今では騎馬隊を率いる将軍様ですか」
他愛ない会話は心地よく、いつまでも続けていてもよかったのだが。

「軍師。眠らないのですか」
「眼が冴えてしまって…あなたのせいで」
「続きを、しなくてはならないのですが」
「続き…」
すこし考えて息を呑む。
「ええ。まだ、中に」
趙雲は苦笑いをして、稀少な智者の頭部を覆う美しい髪を撫でた。
「某がしますので。軍師は、楽に」
少しの期待もある。もう一度繋がれはしないかと。
趙雲はしようと思えば一晩中でも翌日中でもできる。一夜にどのくらい行為を行うかは、軍師の様子次第。

楽にしろといわれて楽にできるものでもない。
身を強張らせた軍師を背後からゆるやかに抱き、羞恥によってか紅潮した耳に唇で触れた。
「赤くなった耳が、おかわいらしい」
びく、と反応して振り払おうと頭部を振るのを、後ろから包むように抱きすくめる。
羞恥か戸惑いにもじもじと両脚を動かすさまがまた愛らしく。
この人の中の愛らしい部分など、いくらでも見つけられる気がする。
情交のあとでぬぐった肌は、その後の戯れのためしっとり汗ばんでいた。
後でまた拭いて差し上げなくては、と思うのだが、ぬぐえないほど汚してしまいたくもなる。

膝を撫で太腿の外側をゆっくりと撫で、ことさらに柔らかい内股へと手のひらを滑らせて、後孔の窄まりに指を辿りつかせて撫で上げた。
「…そのようなことを、あなたにさせるのは」
行為の前に慣らすのはこれほど嫌がらないのだから、中の後始末はよほど抵抗があるのか。
「しかし、出さなければ」
「…ならば自分で、やります」
「自分で?」
趙雲は動きを止めた。思わず少し笑ってしまう。
「ご自分で、―――できるのですか」
その軽い揶揄は軍師の感情を逆撫でしたようで、彼はきっぱりと言い放った。
「…できます」

本当にできると思っていた。情交前の準備では自分で其処をまさぐることもあるのだから、それと変わりはあるまい。
しかし、やってみると己の身体の事前と事後の変わりようにおののき、こくりと喉を鳴らす。
入口からしてひどく腫れぼったくふくらみ、熱を帯びていて。触るのもためらわれるほど過敏になっている。
視線をさまよわせながら意を決して中に指を入れてみて、ひっと息を呑んだ。
「濡れ………」
「某のものだな。…奥でたくさん出したから……すまぬ、軍師」
誠実そのものの声音で心底すまなさそうに謝られても、何の救いにもならない。
「い、いえ……欲しがったのは私…ですので…」
記憶は定かでないが、奥に熱い飛沫を浴びせられて達する快感を求めたのは自身であった気がする――思い出すと腹がえぐれるほど恥ずかしい。
思い出すといえば、その時味わった中を貫かれる悦楽の記憶までよみがえり、下肢に疼くような重い感覚がまといつく。
「う、…ぅ…」
中は熱くとろりとろりとぬめっていて、腫れぼったく、それにひどく敏感になっていて。
熱くぬかるむ其処が自身の一部とはとうてい思えず、むりやり中に入れた自身の指は上手く運べずに、弱音を吐いてしまいそうになる。

震えそうな指を奥へと進めて掻き出そうとするのだが、粘液はぬるりと指に絡まるばかりで、外へは出てこない。
「ひ、……ふ、…っあ、あ――出な…い…どうすれば」
とうとう涙声になってしまった軍師を、趙雲は慌てて抱きしめた。
「軍師――指をすこし折り曲げて…、指の腹で襞を引っ掻くようにすると、――」
なんということを口にしているのだ自分は。のちに主君から全身肝だ!との評価を得ることになる胆力を有する趙雲であっても動揺を隠せない。
この方と共に在ると、己の生で経験したことのないことが多く起こる――


にしても、やはり軍師にとっては苦行であるようだ。
このことが悪しき記憶となって、趙雲との交合を拒むようになってはたまらない。
趙雲は背後から細いあごをとらえて口づけた。やわい口唇の感触に、軍師の痴態に煽られて欲情した腰がさらに重くなるのを感じながら、軍師の前へと手をやった。
槍をふるうことに慣れごつごつと堅くなった手で、軍師の陰茎をやわらかく絡めとる。
「ん、…っ―――」
手のひらで握りこむと、ゆるやかながら反応があった。激しくはしないよう、だけど確実に快を煽るよう動かす。
「ふぅ、んん…」
口づけの合間からこぼれる吐息が色めいた。
趙雲は軍師の男根を可愛がる手はそのまま、片方の手指を軍師の後孔に忍ばせた。
中で硬直したように留まっている軍師の指に指を添えて、先ほど助言したように――すこしだけ折り曲げて、指の腹で壁を引っ掻くようにして動かすと、とろりと白濁がこぼれでてくる。
もがくように身じろぐ身体を回した腕で動けなくして、両方の手を動かした。
届くかぎりの奥へと入れ、ぐるりと回しながらすこしだけ折り曲げて襞をなぞるように入口まで引き出すということを繰り返すと、奥にわだかまる精が掻き出されていく。

この猥雑な刺激はあんまりで、孔明は片手で顔を覆った。
細い文官の指と、太い武人の指が中で交わり、とろみを絡めて内襞をえぐるようにして搔き出すさまを、己の腹と指という感覚器でまざまざと感じさせられる背徳感。じわじわと刺激されていく欲が胸にせまり喉元まで押し寄せる。
「は、…」
耳元に、荒い吐息。
軍師、と音ではなく荒いささやきだけで呼ばれた。
「ん、~~っ」
きゅうと締め付けた一刹那のあと、残りの白濁が掻き出され、ぱたりと落ちた。



淫猥な感覚を感じ取るほかは殆ど何の役にも立たなかった、中に入っていた手指は抜き出されていて、ぱたんと敷布に落ちている。
槍も剣もおそろしく巧みに扱う利き手が奥処で動き、誰もが感嘆するほど愛馬を巧みに御する逆の手が孔明の男根を握り、動いている。

精を掻き出すという始末は終わって、どちらの動きも孔明の快を確実に煽らんとするものに変わっていて。
二本の指は揃えて中をなぞるように出入りしたり、奥に留まって二本を開くように掻き回したりして孔明を悶えさせている。
「あぁっ、ぁ、んぁ……ぁ…っ」
裸体である孔明に比べて、背に当たる武人の胸は夜着に覆われている。
衣に覆われているものの、その男根は大きく堅く立ち上がっている。布越しにも分かるその熱量に眩暈に似たものを感じて、ほどこされる愛撫にとめどない喘ぎをもらして孔明は喉をそらした。

「あ、あ、……子龍、…達かせないで」
追い詰められる感覚を、首を振って追い払う。
のぼせているように身体も脳も熱くなって、思考や理性というものはとうに深みへと沈んで消え失せている。
「手で、達かせないで、子龍……繋がりたい…」
「よろしいのですか…?先ほど清めたばかりですが」
諫める内容だが、声に期待と喜悦がにじむのを止められない。
「あなたと繋がり、奥、突かれて…達きたい――」
「―――っ……孔明、どの…本当に、あなたは――どこまで某を煽るのか」
後ろから趙雲に抱え込まれている姿勢のまま、腰を上げられて脚を大きく開かされる。晒された奥処に大きく滾った雄の昂ぶりが押し当てられ、その熱さに怯む暇もなく趙雲の猛りに貫かれた。
「ひ、ぁ、ああ……!」
最奥まで肉襞いっぱいに含まされて意識が離れそうになる一方で、そのたくましい質量をまざまざと感じ入ってしまう。
「あ、あ、ん、ぁああ……んっ…!」
「ああ、いい、です、軍師――たまら、ない、…っ」
趙雲が腰を蠢かすのに合わせて腰が揺れて膝が震える。奥まで突き上げてくる熱塊によって快楽の波がうねり立った。

「ひぁっ…あ…ああぁ……ん、あぁ、あ」
とろりととろけて包みこむ熱い内襞を自身の怒張に堪能させんがために幾度も擦り上げて快を追いながら、趙雲は孔明の快をも高めていった。
先端からこぼれ出る蜜をからめて、揺すり上げる己の動きと合わせるように擦り、だけど達かしてはしまわないように時折手を止め、放出を留めるように根元を握りしめる。留めている合間の軍師の肉襞の淫らな締めつけに感じ入り、締め付けの合間を縫うように揺すり上げるとより淫靡に絡みついてくるのが、たまらない快を招く。
「あ、あぁあぁぁん、しりゅ、しりゅう、いい、奥、されるの、きもちい、あ、あ、じらさないで」
「っ、軍師、――中に出されるのが、御嫌ならば、」
「や、ぁ…だめ、抜かないで、このまま、――ひぁ…!あああ」
最奥を満たされて孔明は悲鳴を上げた。
羽交い絞めのような力で拘束されて、これ以上はない奥を突きあげられて、されにそこを深く強く繰り返し幾度も抉られる。
「軍師、軍師、…孔明殿、ああ、」
奥深くを突くと見悶えてのけぞる背も、汗にまみれて密に触れる肌も、呼ぶと、子龍、とすがるように返される声音も、なにもかもがいとおしい。
熱く潤むなかで混じり合い交じり合い、互いの境界が溶けるように曖昧になってゆく。
達したいが、達したくはない。達してしまったらこの夜が終わりになりそうで。
とめどなく高まるかとみえた快と熱も、ついには極まりがやってくる。
「孔明――」
美しい彼のあざなを呼ばわりながら一際奥までを穿ち、とろけそうに熱い中にむけて己の欲を解き放つ。熱い奔流を身の奥に感じた孔明もまたとろけそうな熱に身をゆだねて遂情を迎えた。



背後から抱かれたまま乱れた呼吸を出し続ける。身体中に汗が流れて、ていねいに拭かれて清められていたのに見る影もない。
「……あの」
整わない息のなかで、かねて気になっていたことを口に出す。
「はい」
「子龍は、……どのくらいすれば、満足を」
「なにを、ですか」
「その、私との交合を」
「軍師と――満足、するのかな。一晩と、翌日中と、その翌日くらいまですれば、おそらく一旦は落ち着くかもしれないですが」

予想をはるか超越するおそろしい返答を聞いて背に戦慄が走り、下がらない熱がまた高まりそうな孔明は目を閉じて息を吐く。
微苦笑をした趙雲は、あてやかな肢体からゆっくりと離れようとしたのだが。
なかがきゅうと締まって離してくれない。
「軍師…」
潤む隘路に埋め込んだままの自身がまた熱を帯びてゆくのを感じ、趙雲もまた息を吐く。

熱い汗に濡れた絡み合う膚を少しでも離すと冷えた風が通るようで。とけたようなふたつの身体を離すことができなかった。


 









(2024/8/18)

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