シリウス2.2 群青 魏孔(私設)


*シリウス軸・護衛を呼んでしまうver







珠のように白い肢体を持つこの男を犯すことが愉快でならず、敷布の色を変えてみたりもした。

妓楼を模した派手な紅色の敷布を用いたときは、遊女にさせるように口淫を強いて、上手くできないのを責めて、性具を使って念入りに辱めた。艶めいた緋紅というのは彼にもっとも遠い色であろうに、硬質な白い膚に映えてうるわしくなまめかしく、泣きじゃくる体を宵のうちから苛んで、紅に包みこんで抱き眠った。
彼の着る道袍のような黒の上で犯そうとした時は、あまりの陰気さに萎えそうになって、その敷布は剥いで蹴落とした。
赤みのある色は情欲をかきたてた。牡丹花の深紅、炎のような朱もよかった。

それぞれに興は乗ったが、興を添えても添えなくとも、彼を抱くのは極上の愉悦を感じる。

膚の白いものは他にもいる。
顔のうつくしいものも、・・・このように知性のあるつめたい容貌のものはおるまいか。声が涼やかな者は、ほかにもいよう。
違う、そうではない。彼は肌も容姿もうるわしい。だが、そうではない。
彼は、諸葛亮孔明という軍師は唯一の存在である。それが肝要なのだ。




濃藍の布を用いてみた。夜空の中で月を穢す風情が愉しめようかと。
性の享楽に馴染むことをせずに、屈辱と恐れに顔色を無くして魏延に抱かれる軍師であるが、その日はいつも以上に嫌悪の感情が濃く、裸身をさらすのを嫌がった。
すがるように単衣の帯を解かせずに守り、薄暗がりでも顔をゆがませているのが見て取れて、魏延は鼻先でせせら笑う。
なにをまたそう嫌がっておるのか。身体はとうに陥落させられておるのに。
馥郁たる香りが、帳を下ろした褥の中に充満していた。彼の身をゆるませるためにわざわざ高価な香油を贖うているのだ。感謝して欲しいものだ。
かんばしい香りを漂わせる香油をたっぷりとまぶしつけた指を、奥処に挿し入れる。清楚な甘い匂いとは裏腹にぐぷりと淫猥な音が鳴り、細首が反った。
「あ、・・・・あ、いや、だ、」
涙さえ浮かべて抗おうとするのがおもしろくない。いや、おもしろい。
別の涙を浮かべさせてやりたくなる。
香油にまみれさせた指を出し入れし、ときおりは思わせぶりに折り曲げ、曲げた指先で粘膜をこすりたてる。
「あ、・・・あ、っ」
指を抜き差しし、ゆるやかに蠢かしたり、香油に濡れそぼった粘膜を擦り撫でたりすると、嗚咽まじりの声が上がった。
なかでも腫れぼったい膨らみを撫でると、腰が浮き上がる。
「ひ、――」
「ここが、よいのであろう」
のぞきこむと、顔を背けられた。
軍師の花芯は勃起している。潔癖なものらしく色薄く上品なそれを目の端で認めて嗤い、好いところを指の腹でこすってやった。
「あ、あぁ・・!」
花芯の先に透明な雫が浮かび上がる。
喜んでいる証拠だ。
嫌悪に顔をゆがめようと、奥処に無骨な指を受け入れて中心を勃たせて悶えているさまに、なんの言い訳ができようか。

「佳うございますかな?」
わざらしく下手に出て、たわむれに耳朶を甘噛みするとびくっと震えて中がきゅうと締め付けた。
「はは、・・」
喉が渇くような心地になる。ここに突き入れてはやく中を堪能したい。
「いや、だ―――」
涙まじりの細い声に腹の底に黒いものが湧き上がる。
「ほう、御嫌か」
魏延は指を抜き取るそぶりをみせた。
「あ、・・・」
惜しむように中が絡みついてくるのに、魏延は確信する。
彼の中は、魏延の雄のものに蹂躙されるのを待ち望んでいる・・・

「よい、とひと言口にすれば、達かせて差し上げますぞ、軍師殿」
またぐちゅりと音をさせて指を差し込めば、開いた足の太腿を震わせて迎い入れる。狭いが、抵抗はもう少ない。熱く濡れた内部が絡みついて太い指を受け入れている。
顔は背けられたままで、結いが解けかけた髪は乱れて敷布に擦りつけられていた。
「奥を、掻き回されたいのでは?して差し上げようとも」
思わせぶりに奥に指を差し入れる。最もながい中指でも届く範囲には限界がある。
「もっと太いもので奥を突かれたいのではあられぬのか」
「・・・う」
震える唇から嗚咽が漏れた。
肯定はない。
こういう可愛げのなさゆえに殊更に酷く凌辱されているというのが、まだ分からぬのか。
いま少し甘えてすり寄ってくれば、辱めて責め苛まず、もっと甘う抱いてもよいというのに。

魏延は中に埋めた指をゆっくりと蠢かせた。二本を揃え、腹の側にあるしこりをかすめて通り過ぎさせる。
ここが好いのは分かっている。擦って欲しいであろう。そこをいくばくか嬲ると軍師がもう達するであろうことを知りながら、わざとその膨らみには触らずにかすめるようにくすぐる。
「あ、あ」
足先が泳ぐのは抗うためではなく、快を逃す為であろう。
軍師の花芯は濡れそぼり、震えるたびにこぼれる蜜は足の合間を滴り落ちて、脱がぬままの彼の衣を汚している。
このように濡らしておいて、花芯をせつなげに震わせておいて。まだ言わぬ気か。
中は蕩けるように熱く魏延の指に絡みついてくるものを。魏延の男根を迎え入れたいくせに。太いものを中に挿れられて、揺さぶられたくてたまらぬくせに。
その証拠に、両脚は閉じられずに淫らに開いて、ときおりねだるように腰を揺らめかせているというのに。

「ああっ、あ、い、ぁ・・・!」
「いい、と、ひとこと言えばよいのだ。欲しいのであろうが!」
「ひ、あ、ああああ」
しこりを両指で挟むようにしていたぶると、軍師はびくびくと躰を跳ねらせ髪を振り乱して悶えた。
軍師の好いところを幾らでも突いてやろうし、突きながら花芯を愛撫して何度でも達かせてやろうに。
いい、欲しい、と、言いさえすれば。
挿入を模すように指を出し入れし、突き込んで揺さぶった。
「好きなのであろうが、ここが。ここを、弄られるのが」
「違う、・・したくない、私は、このようなこと、」
軍師が声と背を震わせる。
「某を、怒らせたいか。なるほどな」
魏延の声が低くなった。
「それほど、達したくはないか、軍師殿。では、達けぬよう縛って、某のものを挿れてやろうか」
どのようにのたうち回っても、達することは許さぬ。せいぜい泣き叫べばよい。

縛るものをと目で探して、ほどよき細紐を見つけた魏延は、それに手を伸ばした。すなわち、結いのくずれた軍師の美しい髪にまつわりついている、空高い蒼天のように遥かに蒼い組み紐を、乱暴に抜き取った。

意図を察したのであろう軍師は顔を蒼白にさせ、達する直前まで弄られた身体で這いずり、指先を伸ばした。
「・・やめ、よ。それは、―――それは・・」
魏延は、夜目が利く。ましてや軍師の肢体を堪能するため褥の脇には小さな明かりを灯してある。
その髪紐は、ある武将の持つ直槍についた房飾りとまるで同じ色だった。

「・・・・・・・・」
言葉もなく、軍師が涙をあふれさせた。
なるほど、な―――・・・・・
今宵、ことのほか軍師が強情に快を拒むわけが分かった。
朝、外出していたのだったか。かの将に守られて。
荊州新野の小城にいた折、あの将はもっぱら主公や軍師の護衛を勤めていたのだというが。この益州に入ってからは、そういうことはあまり聞かない。あの将が軍師の守りに付くのは久しぶりな筈だった。
日中は、心の底から信をおく者に守られて過ごし。
その夜に、反骨と罵り心の底から嫌っている男に犯される心情とは、いかなるものなのだろう。
ああ、それに。藍色の敷き布はかの将の武袍に似ているのか。だから、衣を脱いで裸身をそこに横たえるのを拒んだのか。
蒼の髪紐もまた、かの御仁にゆかりのものであるのだろう・・・


「・・・・はっ」
魏延は髪を掻きやり、唇を噛み締めた。
掴んでいた蒼い髪紐を、褥の外へと投げ捨てる。
その行方を追ってただ涙する軍師を腕に抱いて、敷布も引き剥がして、床に捨てた。
軍師の薄衣をも剥いで、全裸にした彼を素布の褥に押し倒した。
薄く口を開き、何事かをつぶやく軍師の両脚を開かせる。
さんざんに嬲った尻の穴は赤く腫れ、ものほしげに口を開いて、濡れている。彼のものから滴り置いた透明な液がまたつうと尾を引いてその穴を通り過ぎた。

透明な淫液が流れゆく光景を無言のまま目で追ったあと、魏延はかろうじて着ていた自らの単衣を乱暴に脱ぎ捨て、己のものを取り出した。
軍師の穴がひくりと蠢く。蹂躙されるのを待っているようにも、怯えて拒んでいるようにも見えるが、どちらでも構わない。
「魏延、・・・いやだ、今日は、」
軍師が、魏延を見た。
彼はけして、魏延をその男と重ねるということはしない。
その男に抱かれていると夢想してしまえば、遥かに楽であろうに。
似ても似つかぬゆえに、無理なのか。それとも本当にかの将に対して色欲を持っておらぬのか。どうでもいいことだが。
「やめ、――」
「達かせぬと申したが、止めだ、軍師殿」
達させてやる、何度も。彼の男根には触ってやるまい。中の快楽だけで達させる。泣いて快にむせび、その精が尽きるまで出させてやる。

尻を腰ごと掴みあげ、魏延は己のものを宛がった。
ずぶりと音が立てて貫いてゆく。
壊しはしない、これは主公の大事な軍師であるのだから。
赤銅色の濃い肌色の粗野な手指が、珠のように白い繊細な肌を掴み、細い腰に見合った白い小さな尻に、太く膨れ上がった赤黒い陰茎が呑み込まれてゆく。暗い欲情が湧きおこり、笑い出したい気分だ。
腕を突っ張って逃れようとするのを羽交い絞めに抱きすくめ、更に深く押し込んでいく。
「ぅ、あ、・あ・・・・いや・・」
涙に濡れた声は引き攣って拒絶の文言を口走るが、後孔は魏延の太い雄を呑み込んでいった。
亀頭が入り込んでしまえばあとは楽なものだ。舌なめずりをした魏延は息を吐き、情動のままに軽く揺すった。
「ひぁっ、・・あ、あ──・・!」
内部がきゅうと収縮し、締め付けてくる。
魏延の腕を掻きむしるようにしているのは拒んでいるつもりなのか、だがこぼれ出るのは喘声ばかりで、中は小刻みにひくついて魏延の太い陰茎の形に拡がっている。
持ちあげた腿をぐいと押して身体を重ね合わせ、揺すった。
彼の好いところを突いてやると身体が跳ねた。
解かれた髪が素布を横切って、軍師が悶えるのに合わせて跳ねるように散らばる。
内部はしごく窮屈で、その分だけ魏延にもたらされる快も深い。ふとした瞬間に緩み、また締め付け、奥へと誘うように絡みついてくるのがたまらない悦を呼ぶ。
「ぁっ、あ、・・ん、」
のけぞった喉が細かく震えているのはもはや嫌悪ではあるまい、快楽ゆえであろう。
好いのであろうが。
彼の花芯が魏延の腹のあたりでふるふると揺れている。
達したいのであろうが・・!
べろりと舌で唇を舐めた魏延は、腰を引きゆるゆるとそこを抉った。快楽を与えるためだけの動きで蕩ける粘膜を擦り上げる。
「ぁあ、や、・・そこは嫌だ」
白い腿が痙攣する。ぐちぐちと淫猥な音がして、押し出された香油があふれ、軍師の花芯からこぼれる体液と混じり合い、褥を濡らした。
「好いのであろうが。中が、震えて、締め付けておりますぞ」
「ぅ、う」
涙を流した軍師が頭を振った。
「いや・・・だ・・っ、ひっ、あ、あ、ああ」
「ここが、好きなのであろう、・・っ、良いですぞ、某のもので、何度でも突いて差し上げる」
「嫌だ・・・・・たすけ、―――たすけて、子、龍」
「―――・・・、は」
「子龍・・殿・・」
美しい双眸から美しい涙が流れていた。美しい唇が紡ぐ、うるわしい信頼。
「は、はは・・!」
哄笑した魏延は腕を伸ばし、小卓に置いた鉦を手に取った。
「よかろう、呼んで差し上げようではないか。誰か、おるか!」

鉦を鳴らしてしばらくすると、寝所の扉が静かに開かれ、ひたひたという布沓の軽い音とともに、ひそやかな気配が近付いて、止まった。
「翊軍将軍の元に使いを出せ。おお、そうだ、そこに落ちておる髪紐を持って行け。その持ち主の御方が、泣いて将軍をお呼びになっておられると、申し上げるのだ」

「旦那様・・・・」
気遣うような若い声は、魏延の気に入りの奴隷のものだ。
「魏延、・・-―――」
軍師の手が、魏延の腕に絡んだ。
「そなたの望むとおりにする。だから、その者を下がらせてくれ・・」
「ほう、よろしいのか。かの御仁ならば貴殿を救うてくだされように」
軍師が抱かれている様を見せつけてやる。魏延を咥え込んで、全裸で足を開き揺さぶられてむせび泣いている様を、存分に見せてやろう。
たいした修羅場になるであろうが。構わぬ。

「魏延・・・」
軍師が目を閉じ、眉を寄せた。手を魏延の腕に絡ませて、震えながら中にある魏延を締めつけてくる。ちいさく、身体を揺すりさえした。ねだるように。
内壁はひくつき痙攣していて魏延の雄に絡みついてくる。
「突いて、・・・達かせて」
かすれた声でささやく媚態を見下ろして、魏延は牀台の外に声を放った。
「もう、よい。今のことは忘れて、下がれ」
はい、とかすかな声での応えがあり、ひたひたとひそやかな足音が遠ざかり、静かに扉が閉まった。

「軍師殿。足を、もっと開け」
軍師がまた震え、かたく目をつむった。身じろぐのを意に介せず彼が動く前に片足を抱えあげた魏延は、彼の腹側の弱いところをえぐった。
亀頭でそこをえぐるように突きながら、奥まで突き入れる。
「ここが、好いか」
「・・・・・いい、あ、あ」
柔い粘膜を弄ばれる軍師はぼろぼろと涙をこぼした。魏延に掴まれた腿がひくひくと痙攣する。
抜け落ちそうなほど引き抜き、またゆるりと差し入れる。その際にしこりを押しつぶすように腰を使う。段々とその速度を速くしていき、収縮する内壁を掻き分けて突くと、奥が深く締まった。
「お好きか、これが」
「・・・・・・・・す、・・・・あ、も、う、だめ」
「だめ?」
「あ、あ、いい、・・・きもちい、・・い・・達、く、あ、あ」
軍師の身体の奥に震えがはしるのと同じくして、魏延は彼の肩口を噛んだ。噛みながら、強く腰を押し付ける。
「え、や、あ、あ・・・」
涙が散った。
「ん―――あ、ああ――・・・!」
ひときわ高く啼いて、軍師が達した。強く収縮する奥の締め付けに逆らうように腰を動かすと、軍師は背を仰け反らせて悶える。
「や、・・いま、いって」
昇り詰めた後孔は淫らな音を立てて魏延を咥え込み、もっと深い場所を突いて欲しいとでもいうように絡みついて、奥へといざなうように引き込んでくる。
「なんと淫らな御躰だ、軍師殿。搾り取るようではござらぬか・・・く、――っ」
それ以上に言葉を紡げずに、快を追って魏延は腰を蠢かせた。
ずちゅりと音を鳴らして魏延のものが奥へとすべり込み、そこで留まって揺すり上げた。ぐちゅぐちゅと卑猥な音を鳴らしながら、中を穿つ。
蠢動する狭隘な内部を責め苛み奥へずんと入れ込むと、軍師がのけぞった。
「ひっ、や、ぁ、・・だめ、あ、ああ―――」
「・・はっ・・悦い・・奥に、出しますぞ」
「や、」
絡みついてくる内壁を強く擦り上げて、魏延は躊躇なく最奥へと精液を吐き出した。
「あ、やぁ、・・ぁぁ───!」
奥処を満たす熱い飛沫に軍師の腰が跳ね上がり、再度の絶頂をむかえてがくがくと痙攣した。


手を放すと、力のない身体が寝台に倒れ込む。睫毛の下からあふれ出る雫が頬を横切って褥に吸い込まれる。とまらない涙は悲嘆ゆえか、過ぎた快楽によるものか、知る由もない。
せわしなく紡がれる息がおさまるのさえ待ってやらずに、魏延は彼の躰にのしかかった。
まだ、足りない。
彼の膝裏を上げ、己のものを宛がう。拒まれることもなく、ずぶずぶと呑み込まれていった。柔い粘膜に包まれる強烈な快楽が脳芯を灼く。
また、軍師の双眸から涙があふれでた。
彼の躰は男を知らなかった。いかにほかの者と美しい親愛と信頼で結ばれていようとも、この軍師のこのような涙を見るのは、己だけなのだ。
うるわしい膚を穢すのも、知性がきわだつ怜悧な顔をゆがませるのも、乱れなく結われている髪を崩してまさぐるのも、凛然とした声を快楽に掠れさせるのも。
己だけ、だ。


 











(2023/4/6)

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