賊の討伐に出かけた趙雲は、十数日を経て帰城した。
計画よりも早い帰還に城中が賑わう。後宮に仕える女官から下働きの下女まで、女という女が騒ぎ浮かれ、将兵らも文官までも沸き立っていた。
「お帰りなさいませ、趙雲様」
「もうお帰りなのですか、さすが趙将軍です」
「賊などひとひねりですかな」
次々と掛けられる賞賛に、趙雲は美麗な爽笑を浮かべて通り過ぎる。兵舎を抜け回廊を通り、宮城の奥へと進むほどに人が増え、掛けられる声も頻繁になった。それらにいちいち返答をかえし、年長者には礼を取りながら進んでいく。
奥宮に達すると、今度はがらりと人が減った。
開けはなたれた窓から風が通りぬける。窓に顔を向けた趙雲は目を閉じ、額をかすめる風を受けた。背後からのかつりという沓音に重なって、ひそやかな香が漂う。
「・・・・趙雲殿」
趙雲は数瞬そのままの姿勢でかすかに顎を上げ、ゆっくりと目を開ける。
視界はかすんでいた。
だがその人の姿はあざやかに脳裏に浮かんでいる。
深山の玉を丹念に磨いたかのような容貌も、白と深緑の装束の重ね方も、結い上げた髪の一部が額にかかる様さえ。
「お早いご帰還でしたが、まさか無理などなさっておられないでしょうね・・・?」
趙雲の唇が笑みを刻む。
「ご命令通りに、山賊は捕縛いたしました。首領も生かして捕らえております」
諸葛亮は安堵したように微笑んで眼を伏せ、肩から力を抜いた。
「後ほど検分しましょう。あなたの見立てはいかがですか」
「首領がこちらに寝返るかどうかは、あなたのお手並み次第でしょう。手下どもは、食えればそれでいいという者が多いようです。使いようによっては、兵卒として使えるでしょうね。調練はそれなりに必要でしょうが」
「そうですか・・・それで、賊の拠点はどう?」
「それもご命令通りに。残しては次の賊が拠り所とするかもしれません。焼いて参りました」
諸葛亮がうなづく。
「悪辣なことで有名な賊です。これで民も安堵するでしょう」
「お役に立てたなら良かった。それでは私はこれで退出します」
「趙雲殿・・・?こちらで茶でも喫していかれませんか」
誘いに、趙雲は笑みを浮かべて拱手した。
「あいにくですが、率いた兵をねぎらわなくてはなりませんので」
宮城から出た趙雲は、兵舎に戻り、副官と会った。
「趙雲様、捕虜はどこに放り込んどきましょうか」
賊の首領は、生かして捕らえてあった。といっても既に瀕死で、虫の息ではあったが。
こともなげに趙雲は言った。
「殺せ。自害したと見せかけてな」
長い付き合いの副官が眉を上げる。
「へえ?よろしいんで?生かして捕らえろとのご命令でしょ。帰順させて蜀漢の兵に組み入れるのが、軍師様のお考えじゃなかったですかい」
「あのような愚劣な男、軍師殿のお眼にかけるまでもない。民に害をなす腐った性根が、蜀漢の役になど立つものか」
「あ、趙雲様」
兵舎にたむろする兵たちが、趙雲を見とめて駆け寄ってくる。自分の率いる兵が主だが、他の将の部隊も混じっている。たちまちのうちに囲まれた。
「趙雲様、俺たち明日は非番ですよね!?飲みにいきましょうよ」
「趙将軍、賊の征伐の手柄話を聞かせてくださいよ!」
「私は用がある。お前たちだけで楽しんでくるといい」
趙雲は懐から出した巾着を渡してやった。なかには粒銀がぎっしりつまっている。一兵卒にとっては数ヶ月暮らしていける額だ。こうして無造作に分け与えるから趙雲には財がない。そのかわりに人望がいや増すのだ。
酒だ女だと騒ぎ出した兵らを横目に趙雲は歩き出し、すれ違いざま副官の耳にささやいた。
「今夜中に殺しておけ」
私室に戻った趙雲は、その顔から一切の表情を消した。
腰帯を解き、鋼鉄製の鉄板を外し胸の大鎧をとり、肩当てから手甲までを順に外していく。重量のある防具をすべて取り去ると、趙雲は翡翠色の戦袍を脱ぎ捨てた。
上半身裸になった趙雲の左の肩から腕にかけて厚い麻布が巻いてあった。その布は鈍い鉄色に染まっている。
趙雲は堅く巻きつけてある麻布を無造作に解き、血が乾いた傷に布が貼りつき激痛が走るのにもかまわず、そのまま取り除いた。あらわれたのは凄惨な傷である。
悪辣だと噂の賊は噂だけではなく、実際に悪辣だった。
さきほど趙雲は諸葛亮に嘘をついた。
生かしたのは首領だけで、その側近と有力な手下たちは趙雲の手で皆殺した。生かして捕らえたのは、ほんの一握りの下っ端だけだ。民を殺戮してその富を奪い、女を強奪して強姦する輩など、生かしておいても何の価値もないばかりか、蜀漢のためにはならない。
趙雲の殺気が凄まじかった分、抵抗も激しかった。
剣にも矢にも毒が塗ってあり、かすめただけで痺れを起こす。致命傷になる猛毒でなかったのが救いではあろうが。
矢がかすめた趙雲の視界はすぐにかすみ、痺れが全身を襲ったが動けないほどではなかった。討伐軍の総指揮官であったため、平気な顔で指揮を取り、賊を拠点もろとも壊滅させた。傷のことは副官にも気づかせていない。
血が止まった傷は醜悪な暗赤紫に腫れ上がり、まだ視界は明瞭さを取り戻していない。
薬を塗り新しい麻布を巻きつけてから、寝台に仰向けに横たわった。まぶたの裏は未だ賊の血しぶきの色に染まっており、鼻腔の奥には賊の拠点が燃える臭いが、耳には賊の上げる断末魔が残っている。
目を閉じる。良い夢が見たかった。
数刻も眠っただろうか、趙雲は目を開けた。
熱を出しているのが分かった。視界も意識も朦朧とする。唇が乾いていて、喉も全身も水を欲していた。毒矢で傷を負ったのを打ち明け、解毒の薬を調合してもらえばよかったのだ。あるいは妻でも娶っていれば、このように独り寝台で苦しむこともなかったであろうに。
だが趙雲は嫌だったのだ。傷を負っていることを彼には知られたくなかった。賊を殺し、拠点が燃える炎の中で血で血を洗うような戦闘をしてきたことも、彼に語りたくなかった。妻を娶らないことさえ、彼の・・・・・
「・・・趙雲殿」
「――――」
香が漂う。さらりという衣擦れの音。かがみこむのに合わせて髪が流れる。
夢なのだろうか、だとしたら極上の夢だ。
「怪我を・・・!?」
「ええ」
「すぐに医師と薬師を手配しましょう。なぜ、黙っておられたのです」
「さあ・・・なぜでしょうね」
趙雲は横たわったまま汗に濡れた髪を掻きあげた。上半身はまだ裸のままだ。
心配でたまらないという表情で寝台に近寄ってくる諸葛亮が、まぼろしのように霞んでいた。
「来てはなりません、諸葛亮殿」
「なにをおっしゃっているのです」
なにもかも自分で確かめようとするのは、彼の美点であり欠点だ。
近寄った諸葛亮によって、固く巻きつけた布が取り払われていく。かがみこむ彼の髪が、趙雲の肩に触れた。
傷を見て息を呑む。―――そんな顔をさせたくなかったから、黙っていたのに。
なのに何故だろう。もっと見ていたい。自分の事で顔色を変える彼を。もっと見ていたい。
「ひどい・・傷を。趙雲殿、熱が・・」
趙雲の額へと伸ばしてくる手を、趙雲は途中でつかんだ。
全身から発する熱が、全身を巡る毒が、趙雲から理性を奪っていく。
眼が霞んでいるから、近くで見なければならないのだ。指先が痺れているから、触れて確かめなくてならないのだ。
堅苦しく着つけた襟元をぐっと引いてくつろげる。こぼれるようにあらわれた喉のくぼみに口づけて吸い上げながら、身体を入れ替えて寝台に押し付けた。
「・・・っ趙雲・・・殿?・・・・なにを・・」
「――――」
何を、しているのだろう。何をしようとしているのだろう。
望みを、
唇を合わせる。はじめての口づけはひんやりとしていた。唇の温度がひくい。ああそうか自分に熱があるからかとぼんやりと考えながら口づけを深くしていく。なめらかな感触の舌に触れると、相手がびくりと身じろいだ。
「・・・っん、やめ」
逃げる舌を追ってからめると、もう温度など気にならなかった。諸葛亮の口内も自分とおなじほど熱く感じて、やわらかい口内をまさぐる。逃げるたびに角度をかえて重ね、無理やりに唇を開かせた。
そのころから抵抗が本気になった。残念なことに毒にしびれた趙雲であっても押さえ込めるほど非力なものだ。それとも傷を負った趙雲を気づかっているのだろうか。・・・・ありうる。この人は冷たそうにみえてやさしい。
「諸葛亮殿」
趙雲は諸葛亮の腰帯を抜き取り、それを彼の両腕に結びつけた。
「な・・・」
縛った両手を頭上で纏め、さらに寝台の支柱にくくりつける。
「趙・・・」
信じられないという表情のなかでいつも潤んだように麗しい黒眸に自分が映っていることに、趙雲は困ったような笑みを浮かべ、顔を落とした。
襟をくつろげて白い膚に唇をつける。首すじを舐め、鎖骨のくぼみに舌を這わせ、胸の粒に行き当たるとそれを口に含んだ。
「ん、・・っ」
細い肢体が震えてのけぞる。
片方の朱粒も、指先で摘み、転がしてから舌で舐めると息に混じってかすかな声がこぼれた。
「趙雲殿、・・・やめてください、このようなことは・・・・あっ」
朱粒をつぶすようにまさぐっていた趙雲があやまって爪を立ててしまった時声が上がった。
趙雲は笑みを浮かべる。
「お好きですか、こうされるのが・・・」
「や、め・・・あ、」
舌先で舐め、口に含んで吸い、濡れたところを指先で引っ掻くようにすると、軍師の身体がわなないた。
乱れた吐息を吸い込むように口づける。
軍師の舌は震えており、先ほどのはじめての口づけのときのように口内で逃げ回るということはない。そのせいでよりやわらかく舌が絡んだ。
逃げもせずされるままになっている軍師の口端から溢れる唾液を舐め取って、また重ねる。
もう冷たさなど感じない。
軍師の吐く息も趙雲と同じほど熱くなっているという錯覚がして、趙雲は華奢な身体に乗り上げるように覆いかぶさり、その身体を抱きしめて口を重ねた。
思うさまに接吻を堪能し、音をたてて唇を離した趙雲は、すこし身体を浮かせて諸葛亮の身体にまといつく衣装を左右にかき分ける。重ねた着物には幾つもの留め金や紐がついていて趙雲の侵入をはばもうとするが、それらをひとつずつ取り除くことにうっとりした。
頭上で両腕をまとめあげているため袖を抜くことはできない。すべてを乱し終える前に趙雲は衣の中に手を滑らせた。すべらかな内股に手を這わせ、中心に息づくものに指先を行き着かせる。
「・・・、あっ・・!」
そこに触れると軍師の体温が一気に上昇したようだった。だが抵抗も強い。身をよじり、激しく動いて結ばれた両手を解こうとするので寝台が揺れ、帯がきしきしと音を立てる。
趙雲は片手で結び目を押さえた。
「いけません。御手に傷がつきます」
「趙雲殿・・・お止めください・・これ以上は」
応える代わりに趙雲は諸葛亮の下腹へと手を伸ばした。下帯をかきわけ衣の下へと指先をもぐりこませる。
「や、止め・・・っああ」
中心で息づくものは昂ぶりを示して震えていた。快楽の証しを知らしめるようにゆっくりと指先だけで形をたどる。
そのまま指先で時間をかけて形をなぞり、括れの部分を撫でさすった。先端を親指と人差し指で包んでこすり合わせると、震えながら蜜をこぼした。白いのどがのけぞって、小さな声が漏れる。もう抵抗は無い、が、きつく閉じたまなじりから涙がすべり落ちた。
「・・・・綺麗ですね。諸葛亮殿、あなたは・・・」
愛撫の手を休めずに趙雲がつぶやく。どこか他人事のつぶやきだった。
整った容貌をゆがませ、趙雲の手によって乱されて潤んだ吐息をこぼしながら涙を流す諸葛亮は美しかった。確かに自分の手で乱しているのに、焦がれた人が腕の中にいるのに、趙雲は諸葛亮がどこか遠いものにしか感じられなかった。
・・・足りない。もっと―――もっと、近くに
趙雲は諸葛亮のものから手を離し、身体を伸び上がらせる。寝台の脇の小卓が置いてあり、明かり皿が乗せてある。明かりの入っていない皿の、縁から底をなぞるように中指を滑らせると、火を灯すための油がたっぷりと指に絡んだ。
趙雲は逆の手で諸葛亮の片方の膝を立てさせると、その奥に隠された秘所を探った。
「――――っ」
閉じていた諸葛亮の眼がひらく。
油にまみれた指で固く閉じた箇所を円を描くように撫ぜた。
「ゃ・・・め・・・」
絞り出るような弱々しい声音をもらしながら、諸葛亮が趙雲を見る。泣き濡れた黒瞳にも容貌にも、普段の威厳などかけらもなく、おびえきっていた。涙で震えた声が細くつぶやく。
「それだけは、・・・・やめてくだ・・・嫌・・」
「あなたの頼みならば、何でも叶えましょう、諸葛亮殿。今までだって、そうしてきた・・・」
彼の策、彼の警護―――・・・・なんだって誰よりも上手くやってきた。
「ですが」
くぼみになった箇所をゆるく強くこすり指の腹を押し付ける。
「今だけは、どうか私の願いを」
叶えてください。
中指に力を込め、ぐっと押し入れる。
「ゃ・・!・・・っっあああ」
強張って全力で排除しようとする内部へ、一気に指一本を突き入れた。
すこし抜いては、また突き入れる。何度か繰り返したあとはゆるやかに動かしてなじませた。
一度抜き、また油を掬い取ってふたたび秘所へと差し入れる。
中は熱くうねっていた。指先をすべらせると油がなじみ、趙雲の指をねっとりと締め付けてくる。
指を抜きかけ、また埋め込みながら、胸の朱粒に舌を這わせる。口に含んで吸い上げると、内部がきゅっと締め付けた。
「ほんとうに、ここがお好きですね・・・」
「・・・・っ」
諸葛亮は泣いていて応えない。
すこし抜いては突き立てるように埋め込む。頑なだった内部は篭絡されて潤み、愛液を滴らせる女の蜜壷のようにくちゅくちゅと濡れた音を響かせはじめた。
粘膜の熱さに鼓動が速まり、興奮が高まった。自身の熱をここに押し込んで、熱く潤む粘膜を押し広げたいと奮い立つが、押さえて指を抜き取り、2本に増やして押し込む。
深く差し入れ、ゆっくりと引き抜く。抜く際には震えながら絡み付いてくるのに、趙雲も昂ぶりながら、また差し込んでいく。何度かそれを繰り返しているうちに、
「あ・・ッ」
諸葛亮が今までになく高い声を上げ、びくりとのけぞる
丹念に探ると、趙雲にもその箇所が分かった。
「あっん・・・あっ、ああ・・ん・」
そこを抉ると声が絶え間なく上がり、潤んだ肉が趙雲の指を締め付ける。諸葛亮が首を振ると涙が敷布に散った。
「ゃめ、て・・・、や・・・っ」
悲鳴とは裏腹に細い腰も、練り絹のようにすべらかな内股も震え、その中心で昂ぶる花芯が震えて蜜を溢れさせている。
「・・・ふっぅ、あ」
その身体の緊張が頂点に達する寸前に、趙雲は指を抜き取った。手を伸ばして諸葛亮の両手を戒めていた布を解く。暴れたせいか手首の膚がすこし紅くなっているところに唇を落とし、涙で曇りうつろになった眸を見下ろして、眼の下にも口づけた。
趙雲は手早く自分の帯を解き、はちきれんばかりに膨張した自分のものを取り出すと、諸葛亮の両足をぐっと押し開き、その中心にあてがった。
「あ、・・・いや、いやぁぁあああ!!」
猛々しい昂ぶりが狭い後口を押し広げていく。閉じようとする肉襞を掻き分けて奥へと侵していく快感が背を走りぬけ、趙雲は額に汗を浮かべた。
両手の拘束を解かれても、足を抱えられた諸葛亮に抵抗のすべはなく、ただ泣くだけだ。
折り曲げた足を肩につくほど開かせて、趙雲は奥へと自身をねじ込む。柔い粘膜に包み込まれるのは
背が痺れるほどの快感だった。
「っやぁっ・・・あ・・・あ」
奥まで貫いてかるく揺すり上げるとぼろりと涙が浮かぶ。趙雲は身をかがめて、その涙に唇を寄せた。そのせいで結合が深まり、涙はますます溢れてくる。繋がった部分が異様なほどに熱い。
全身から汗を落としながら、趙雲は熱に導かれるように腰を揺らした。
「・・・いや、・・・い・・ゃぁ・・」
しばらく奥の粘膜に包まれる愉悦を追いながら小刻みに揺さぶっていた趙雲は、自身をゆるく引き出しすこし勢いをつけて奥を突いた。悲鳴混じりの泣き声があがるのを耳でも愉しみながら、そうして何度も最奥を突き上げて犯し、ときどきは奥に挿れたまま先端を粘膜に擦り付け、ぐちゅぐちゅと淫猥な音をことさら立てるように掻き回す。
繋がっている部分も全身も熱い。
見下ろすと至高の美貌がそこにある。
趙雲は開かせた太ももに手を置き、自身をすこし引き抜いた。ぐっと両足を持ち上げ諸葛亮の身体が浮くほどにすると角度をさだめてゆっくりと突き上げた。
「ひ・・ぁっ、あ、あ!」
さきほど暴いた弱いところを抉るように執拗に、何度も腰を打ち付けると、諸葛亮の身体がびくびくと跳ね、内部が趙雲に絡み付いてくる。
内壁の締め付けがぎゅっと強くなるのに合わせて抜き差しを激しく、ひどく敏感な箇所を掠めて最奥を突くような動きで犯しつくした。
「趙・・、いや・・っ、っぁああ――!」
諸葛亮が全身を震わせ、精を吐き出す。
呆然と荒い息を吐く身体を寝台に押し付け、痙攣する最奥へと数度自身を打ちつけ、趙雲も己の欲望を迸らせた。
泣き濡れる身体を抱き締め、まぶたに、こめかみにと口づける。
濡れた唇と潤んだ瞳と赤く染まった目尻がなまめかしく、趙雲はうっとりと微笑む。
耐えようと思っていた。苦しむのは自分だけで良いのだと思っていた。
だが、我が身を受け入れて女のように泣き叫ぶこの人のなんと愛おしいことか。
犯されて無理やりに与えられた快に精を放出し、打ちひしがれて痛々しく泣く姿が、罪深いほど美しい。
震える唇に口づけたあと、趙雲は痩身をうつぶせにした。
「もう一度・・・諸葛亮殿」
背後から押さえつけ、後ろから怒張を一気に根元まで挿入する。ほとんど抵抗もせずに受け入れた襞に包み込まれる快感に浸りながら趙雲は腰を突きいれ、蠢かせる。
ひときわ大きい泣き声を上げたその人の髪を、趙雲は撫でた。
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(2013/8/14)
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