夏空~虹の向こう側  趙孔(私設)

 


02:騎士と姫様の優雅な一日 ・・・想いは交錯する






ちょっと水辺で釣りを。魚が掛かるのをまつ合間に昼寝もすこし。

ささやかな息抜きは、騒々しいざわめきに破られた。
鳴り響くのは、兵卒が身に着ける具足の音だ。しかも数が多い。
ゆっくりと目を開けた孔明は身を起こし、あたりを見回した。
まずい―――ということもない。のだが。
がやがやと賑やかなおしゃべりの内容から察するに、自軍――劉備軍の兵だ。敵ではない。
きっと野外での調練の最中、水を求めて小川にやってきたのだ。

こっそり城を抜け出しての息抜き中である。見つかりたくない。
とりあえず物陰にでも隠れてやり過ごそうと釣竿を片付けようとした孔明は、竿が引かれていることに気付いた。
大物だ。だけど間が悪い。
針にかかっていた魚を逃がし、釣竿と、昼寝の合間に読もうと持ってきた書物をまとめて抱えあげたところ、書物のおさまりが悪く、ずれ落ちていきそうである。
このままでは小川のほうに落ちていってしまう。書物愛ゆえに孔明は無理な姿勢になり、書物を抱え直そうとして。
「――あ、」
濡れた地面に足がすべり、ずりずりと土手をすべり落ちて、あろうことか川まで落ちた。

どぶんとごく地味な音と、派手な水しぶきが上がった。
流れは浅かった。浅いことがかえって災いした。深ければ浮いただろうに、浅瀬ゆえに足を水底の岩場に滑らせて、尻もちをついてしまう。
水に浸かった足がずきずきと痛む。水に赤い筋がたなびいているから、切れているに違いない。
衣服は、下半身と袖がずぶ濡れ。片方のくつは流れていってしまった。
この恰好で、傷んだ素足で、城まで歩くのか。

おのれの恰好が滑稽で、目を伏せた孔明はちいさく笑った。
草むらからは茶色の鳥が飛び立ち、澄んだ水の中で翡翠色の小さな魚が逃げ惑っている。突然あがった水しぶきに驚いたように、岩かげから幾羽かの青い蝶がひらひらと飛び立った。
「驚かせて、しまいましたね」
悪いことばかりではない。
書物は無事に川辺にあるし、座り込んだ孔明が水の流れをさえぎってすこし滝のようになって、水しぶきが上がるところに、小さな虹があらわれた。
澄み渡った青天の下、きらきらと光って飛び散る水しぶきと、透明な色彩のちいさな虹のそばを、淡い空色の優美な姿の蝶がひらひらと飛ぶ。
重なった偶然が生み出した、夏のささやかな奇跡のような光景。
「はは・・」
ひくい笑声をあげた孔明は目を閉じて、息を深く吸い込んだ。



遠くの下流にがやがやと兵卒たちが現れた。軍装はやはり劉軍のものだ。
ゆっくりと立ち上がり、ヤブの影に身を隠しながら、岸辺に這い上がる。

足の怪我はすり傷だった。すべり落ちた際に土手の土で派手に擦ったらしく、土汚れが付着して、ずきずきと痛む。
幸いなことに、ひねってもいないければ折れてもいない。傷口を洗って布でも巻けば、歩ける。
衣服だって、この陽気だ。幸い、衣を幾枚も重ねる文官服ではなく、簡素な軽装である。しばらくすれば乾く。
助けを求めるまでもない。

「―――軍師、殿」
低い低い声が掛かったのは、その時だった。
頭上に影が落ちる。
硬直した孔明は、すこしずつ視線を上げた。丈夫そうな軍靴。具足をつけた脛。足は長く、腰の位置は高い。長身だ。
上げたのはそこまでで、視線を地面に戻した。顔を上げては宜しくないものが目に入る気がした。
すると長身の方が身をかがめた。
嫌味なほどに整った眉目。眼底にきりりと力のこもった視線はひどくこわばっており、唇も引き結ばれている。
「、・・・」
「―――これは一体、どういう次第か。説明して頂きましょうか」
なぜ、ここに居るのが分かったのだ、という問いを、かろうじて呑み込んだ。
武人が片手に、孔明の沓を握っていたので。


「職務を怠けたわけはありません。今日は休養日として、主公にも承知いただいております」
「知っております」
男前が怒ると怖い顔になるのだということを、孔明はこの主騎によってはじめて知った。
「一人で城外にお出になるなと、申し上げた筈です」
声も、激情を押さえているとでもいうように強張っている。
「承知した覚えはありません。私は深窓の姫君ではない。閉じ込められるなど、まっぴらです」

武人はきりりとした眉を跳ね上げ、低く恫喝した。
「荊州が平和だとでも思っておられるのか。新野は、曹軍に最も近い前線の城。どのような危険が、あるのかもしれぬというのに・・!」
「曹軍に、私を知る者などおりませんよ」
まして平服で釣りをしている者が、敵の目に留まるはずがない。

あくまで冷静で淡々とした軍師の受け答えに、武人は声を荒げた。
「何かあってからでは、遅い。あなたは自分がどれほど貴重な存在か、分かっておられないのか。天下を三分しようなどと言い出す智者が、そこらに居るとでも?あなたは、主公――劉備様の征く道を拓く者だ。・・・何があろうと、失えない、俺にとっても」

「趙、将軍」
こうまで忠義に満ちた諫言をうけて我を通すことは、いかに孔明でもできかねる、が。
「主公でさえ、お一人でほてほてとお出掛けになるのに」
孔明は嘆息した。
「主公の臣下に過ぎぬ私が、釣りも昼寝も、護衛を引き連れて行えと?」
魚なんて釣れるものか。昼寝を見張られているなんて、まっぴらごめんである。

「主公のあれは。俺も関羽殿、張飛殿にしても、頭痛の種ですよ・・・」
民と触れ合うためにふらりといなくなってしまう主君の放浪癖を思い出して、趙雲は顔をしかめた。

「ただ、主公の場合は、人混みにいる場合が多いので。乱世をくぐり抜け、危機に対する勘も鋭い。俺は、あなたの方が、心配です、軍師」
まあ、たしかにそう言えなくもない。
孔明は、一人になりたくて抜け出しているのだ。
「・・・あなたに何かあるくらいなら。我が身を八つ裂きにされたほうがましだ」
甲冑をつけた胸にいきなり抱きこまれて、孔明はぞわりと総毛立った。
趙雲の声は、・・・いや趙雲の言動全てはいつもいつも真摯で真剣で、発される言葉に何の飾りもない。
だからこそ心に一直線に刺さる。
それが、おそろしい。


「・・・おおい、子龍よ。お説教はそのへんにしたらどうだ。軍師殿、怪我してんじゃねえのか?」

茶化すような、それでいてどこかおずおずとした声を掛けられた。
離れがたいとでもいうように、背を回った手に少し力が篭められたが、息をついた趙雲は孔明を離した。

「叔至」
「子龍、・・・兵がいる。そのあたりにしとけ」
「ああ、・・・分かっている」
「この陽気だ。服は干しときゃ乾くだろ。ちょうどきれいな小川なんだし、傷を洗えば」
趙雲とすれ違った将校は、うやうやしい軍礼を孔明にほどこした。
「諸葛軍師。はじめてお目にかかります。陳到、字は叔至。産まれは豫州汝南。劉備様が豫州刺史をお務めの折、家臣としていただきました。お見知りおきを」

こたえて孔明も丁寧な礼と名乗りを返す。
年齢は孔明よりすこし上だろうか。字で呼び合う互いの気安い態度から、趙雲とは同世代の武将なのだろう。
闊達そうな様子に好感が持てた。
関羽、張飛よりは下の世代のせいなのか、軍師というものにそれほど反感はないらしい気さくな態度に心がやわらぎ、微笑すると、返すように将もにこっと笑った。

「軍師殿。濡れた服をお脱ぎになっては?干せば、すぐ乾くでしょ」
こともなげに陳到に言われて、孔明はすこし戸惑う。
からりとした晴天である。農夫である頃ならば濡れた服なんて躊躇いなく脱いだだろうが、軍師という一応の地位にある身で、はしたない真似をして良いのだろうか。

下流では兵卒たちが下履き一枚になって水浴びしている。ぎゃあぎゃあと水を掛け合いながらはしゃぐにぎやかな声が届いていた。
あけすけな様子を見ていると、まあいいか、という気になってくる。文官服でもない平服だしと上着を脱ぎかけたところで、
「何を、しておられる」
こわい声に手を止める。
「何をふざけたことを、叔至」
白い馬を引いてぬっと現れた趙雲が陳到の頭部を後ろからどついた。陳到は頭部を押さえてうめき、「いやでも、お前な・・」と口ごもったが、なぜか、なぐられた陳到のほうが趙雲に「いやあー、すまん」と詫びた。

「趙将軍、陳将軍、どうぞお構いなく。調練の最中でありましょう?邪魔をして申し訳ない。この程度の傷、手巾で押さえておいて、城に戻って手当てをいたします」

両将軍は、孔明には分からない目配せをしあった。
言葉はなかったがそれで話はついたらしく、二人ともうなづき、
「手当をします。そちらの木陰にでも、座っておられよ」
「じゃあ俺はこれで」
趙雲は近づき、陳到は背を向けた。

その背に孔明は手を伸ばす。
「あ、陳将軍、もう少し、話を。ああ、陳将軍に手当をしていただくわけには、いけませんか」
空気が凍り付いた。
趙雲は鬼の形相になってばっと振り返って陳到を睨んだし、陳到は陳到で「何言い出すんだよこの軍師・・!」というような鬼気迫る表情になって後ずさりまでしたので、孔明は伸ばした手をこそっと引っ込める。

「お、俺。いくわ。そそそろそろ、休憩終わりだし。兵はまとめとく、子龍。ぐ、軍師殿、調練、もう終わったんで、大丈夫大丈夫っ!あとは、あいつらまとめて城に返すだけなんで、俺ひとりで十分なんです!子龍置いていくんで、あは、あはは、ゆ、ゆっくりなさってくださいねーー息抜きもたまには必要ですって!はははは・・・!」

まくし立てられ、見事なまでの逃げっぷりで素早く逃走されて、孔明は切なく肩を落とした。
そのように、脱兎のごとく逃げなくても・・・軍師という存在は、武将から嫌われるものだとは知っていたけれど。
明るくひょうきんな雰囲気のある陳到なら、なじめると思ったのに。
まして、・・・困る。趙雲と二人きりになるというのは。


「俺が付くのは、お嫌であられるか」
強張った声音でこぼされて、孔明は首を振った。
「いいえ。失言を、お許しいただきたい」
彼は何も悪くない。これは孔明の側の問題なのだ。
趙雲が孔明に向ける気遣いは、劉備への忠義ゆえのもの。それを何を勘違いしたのか、胸の中にあふれさせてしまっている、孔明のほうの。

兵卒たちからは見えない木陰に入り、衣服は脱いで樹木に掛けた。薄物一枚になり、こんなものしかないがと言って渡された、野営をする際に使うのだという大きな荒布をまとって身体を隠す。
別に寒くはない、という言葉は、ついに出なかった。地位があるものは人前で肌を見せてはいけないのであろう。なんとも不自由なことに。

「貴殿には、迷惑をかけてばかりですね」
小川から汲んだ清水で、傷口をていねいに洗われた。歴戦の将にそのようなことをさせるのが心苦しい。
「私は庶人です。少し前まで農夫であり書生だった。人に付き添われ、世話を焼いていただくことに慣れておりません」

言ってから、この惑いはそういうことかもしれないと考える。
両親や伯父、長兄といった年長の親族と早くに分かれてからずっと、弟妹の世話を焼いてきた。
意地もあり、長兄からの援助の申し出を断り、誰かを頼るということは避けていた。
それが主君を得たとたん、警護の武人というものが付いた。
環境ががらりと変わり、他の武将たちからは白い目で見られ嫌われている中で、趙雲だけは何かと手助けをしてくれた。武勇も心根も、容姿すらもすぐれたこの武人だけが・・。
心が揺れて昂ぶるのも無理ないのではないか。
それを、恋情、と錯覚しているのではないか。

それならば、納得できる。
慣れと共にこの感動は薄れるだろうし、また、趙雲は護衛におさまる器ではなく、兵卒をまとめる将であるのだから、傍に付くことも少なくなるだろう。
少し経てば、おさまる。

「慣れないことで、申し訳なく思います。庶人上がりの軍師の警護は貴殿もさぞかし面倒なことでしょうが、もうしばらくは、お願いいたします」
心を落ち着け、謝罪と礼を篭めてつぶやくと、馬に下げていた布袋から傷薬を取り出していた趙雲が一度ぐっと唇を噛み、ゆっくりと顔を上げた。
「面倒など、・・・ゆめ思いませぬ」
「将軍、」
いつも思うのだが、この将の眼光は強すぎる。真摯で誠実で・・・呑まれてしまいそうだ。
落ち着いたはずの心が、またざわざわと蠢きだす。

「自分で、できます。弟妹がおりまして、傷の手当は慣れているのですよ」
「いえ。傷が、砂を噛んでおります」
偉丈夫が膝をついて素足をじっと見ていることすら落ち着かないのに、さらに足裏に手を添えて持ち上げられる。
足をまじまじと見ていた将は、おもむろに傷に口を寄せた。
傷に絡んだ泥土は水で洗い流したが、灰色と黒のこまかい砂が、傷口の奥に残っている。
躊躇うことなく趙雲は、傷に口をつけ舌を這わせた。
「なにを、――」
背が硬直する。
無意識に逃れようとしたが、足を掴まれていて叶わなかった。
「・・・・・・ぃ、」
否、とわななく言葉をつぶやこうとしたが、音になっていない空気の震えが喉からもれただけだった。

痛みは当然ある。だが別の衝撃のほうが大きかった。
持たれた足が熱い。流水によって冷えていたはずなのに。
足の甲に息がかかって孔明は大きく身じろいだ。
「ぁ、・・ゃ、・・・」
喘ぐようにもらすと、少しだけ顔を上げた趙雲が押し殺した声で告げた。
「傷口に砂を残すと、治りが悪く、・・・傷痕が残ります。今少し、ご辛抱を」
孔明は身体をこわばらせて耐えているが、趙雲もまた耐えるように眉を寄せている。
当たり前だ。他人の傷口に舌を這わせるなど、いかほど不快なことだろう。
切り傷の奥のところをひときわ深く舌でまさぐられ、孔明は背をのけぞらせた。
「ぁ、あ、・・・っ」
あられもない声を恥じて、孔明はかぶった布を喉元まで掻き寄せた。

普段の孔明ならば治療をまじまじと見分しただろう。
だが、無理だ。
刺激も情報も遮断するべくかたく目をつむり、残りの時間をひたすら耐えた。
このひと筋の甘さを含んだ胸苦しさも、錯覚なのだろうか。
錯覚・・・ほんとうに?



丹念に傷をたどった趙雲はやっと顔を上げ、砂の混じった唾を草むらに吐き捨てた。
口もとをぬぐって目を上げて、ふたたび目を逸らす。
天幕用の粗末な布にくるまれた軍師は、掻き寄せた布で口もとを覆い、顔をそむけていた。
そして、傷ついたほうの足を趙雲が掴んでいた分、傷の無いほうの足であがいたのだろう、布がめくれて、膝の上までがあらわになっていた。
・・・これでは、まるで。
浮かんだ考えを頭を振って振り捨てる。振り捨てたが、また同じ感慨が浮かんだ。
・・・・・まるで、情事の最中のような

白い足だ。女のような細さややわらかさはないのだが、それでいて、くるぶしは華奢で・・・いつもは冷静で怜悧な印象の人が、舌で傷をえぐるたびに上げる狼狽したようなかすれ声も、たまらなかった。
まして・・・かぶった粗布の下には、下着のような薄物しか着ていないのだ。
掴んだ足を引いて覆いかぶされば、至極簡単に、草むらに押し付けてしまえる。
趙雲は荒く息を吐き、その場を離れた。
小川に行き、口をゆすぐ。顔にも水を掛けた。
どうかしている。このような状況で。
このよこしまな想いも、いっしょに流れていけばよいものを。


清冽な水を浴びてすこし人心地がついた趙雲は、軍師のもとに戻った。
さすがにもう乱れた裾は直しており、悄然とした表情でうつむいている。
「痛みますか」
「・・・いえ」
応えも、意気消沈したものだ。
傷薬を塗り、細い布をきつめに巻き付ける。
「・・・お手数を、お掛けします」
「・・・礼など、無用です」
ぎこちない会話は長く続かず、沈黙が落ちる。
風がさやさやと流れて、互いの髪を揺らした。

意識しすぎている。
互いがそう思っているが、口には出さない。

息抜きが必要なのは、分かる。
彼も言った通り、深窓の姫君というのでもあるまいし、また地位や立場があるといっても、主君からしてほてほてと出歩く弱小の軍団である。閉じ込めておけるわけもない。

たまには一人になりたい気持ちもわかる。
とすれば、・・・一人でいるよりも、共に居るほうが心地よいと想ってもらえる存在に、なれば?
一人で抜け出すことは、無くなるのではないか。

一人で居るよりは共に・・・趙雲は深く嘆息し、捨て鉢に草むらにごろりと横になった。
自分はしょせん、武しか取り柄がない。このように爽涼な川のほとりで、共に心地良い風に吹かれていながら、気の利いた会話一つ思いつかない、面白味のない男――・・・聡明な彼の気を惹けるわけもない。
ましてや、ここのところ・・彼は、自分を避けるようなそぶりを見せているのだ・・・。


しばらくそうして・・・いやだいぶん経って、趙雲ははっと目を開けた。
知らぬ間に眠っていた。
護衛すべきものの傍でうたた寝とは、とんでもないことだ。
「軍、・・・」
身体を起こし、見回すまでもなく、すぐ隣に、布がわだかまっており、その端から黒い髪がこぼれていた。
彼はすうすうと、やすらかに眠っていた。
なんと無防備な、と複雑な気分になるが、それ以上に。
(・・・・・お可愛らしい)
情緒に欠ける思考しか持たない趙雲でさえそう思わずにいられない。
天幕用のごわついた麻布に全身をくるんで丸まっていて、まるで巣の中で憩う雛鳥のようだ。

川も、風も、さやさやと流れている。

『天が・・・主公に遣わしたのではないかと、思う』
『軍師殿は人間なんだぜ、子龍。間違えるなよ』
『分かっている。あれが天人かなにかならば、悩まない』
『・・・手を出してもいいか、どうか。か』

・・・もう、天から授かったものだと思えばいいのでないか。
触れずに、・・・間違っても己の劣情など押し付けることなく。
ただ、お守りすればいいのでは。

始まらなければ、終わりもない。誰ひとり傷つかず何も失わない・・・

というのに。
眠っている彼の髪に、頬に、唇に、触れたくて奪いたくて。
趙雲はぐっと拳を握り締めた。

 






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(2019/10/12)

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